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『復讐の幻想曲(ファンタジア)』7(ライトノベル)


第一章、姫への賛美歌(ヒム)
 ケンイチと一緒に落下した女の子、スピカは目を覚ました。辺りを見渡す。ここはどうやら森のようだ。夜の闇により真っ黒になった木々が、ガサガサと揺れている。
「……ああ、やっと起きましたか」
「ひゃうっ……?」
 下からケンイチの声がし、続いて大地が動いた。
 スピカが下を見ると、地面に仰向けになっているケンイチがいた。大地だと思っていたのはケンイチだったのだ。
「ごめんなさいっ」
 スピカは慌てて体をどかした。
 それでもケンイチは動かない。仰向けのまま、じっとしている。
「あの……盗賊さん?」
 不審に思ってスピカは尋ねた。
「大丈夫、あなたのせいじゃありませんよ。着地の際に力を使い過ぎて『霊泉(ファウンテン)』がなくなっただけです。それに、あなたが長い間気絶してくれてたおかげで、もうすぐ回復しますよ」
「……よかったです」
 スピカは胸を撫で下ろした。その後、ちょこんと首を傾げる。金色の髪がフワリと舞った。
「『ふぁうんてん』ってなんですか?」
 はぁ、とケンイチが小さくため息を漏らした。
「精霊(フェアリー)の力や、精霊により『調律師』が得た力のことですよ」
 ポンと手を叩くスピカ。
「なるほど、まほーの源ですね?」
「いや……魔法ではありませんよ……。いいですか、この世の全てのものには精霊が宿っているんです。精霊は火、水、地、雷、風、光の六種類が存在します。人はこの精霊の力を……」
 喋るケンイチの顔の前に、スピカは手を出した。
「それくらい知ってます。精霊の詩(うた)が聞こえる人のことを『霊聴者(リスナー)』、特定の精霊の詩を調律し、自身の力として使える人のことを『調律師』と呼ぶんですよね? 人々はこの精霊の力を借りて、日々生活してるんです。ちゃんと知ってますよ」
 ケンイチがわずかに目を見開いた。表情の変化は少しだが、驚いているようだ。
「知ってたんですか。……ですが、それならなぜ魔法なんて呼び方をするんです?」
 顎に人差し指を当てるスピカ。悪戯っぽく笑う。
「だって、まほーみたいじゃないですか」
「……あ、そうですか……」
 呟いてから、ケンイチは立ち上がった。周囲をグルッと見渡し、歩き出す。慌ててスピカもあとを追った。
「……これからどうするんですか?」
「とにかくここから離れましょう。この森は魔物が出ますから」
「ま、魔物ぉっ?」
 悲鳴を上げ、スピカはケンイチの腕に抱きついた。小走りに移動していく二人。
 気まずそうな顔をしているケンイチは、正面を向いたまま喋る。
「……ところで、そろそろ名前ぐらい教えてくれてもいいんじゃないですか、スピカ姫?」
 警戒のため辺りに目を配していたスピカは、ケンイチに顔を戻した。
「そうでした。まだお互い名前も名乗ってなかったんですよね」
 微笑してから一転、真面目な顔になるスピカ。
「聞いて驚かないで下さいよ? 実はわたし、ルーン王国の姫、ルーン・ウィン・スピカなんです! ……ってあれ? 『スピカ姫』?」
 目をパチクリしているスピカに、ケンイチが一瞬だけ視線を送った。
「なんとなく察しは……というより確信してました。あなたがスピカ姫だってことは」
「な、なんでわかったんですかぁ? わたし、あまり公の場に出たことないんですけど……」
「秋実さんが言ってたんですよ。水色ドレスを着たそれはそれは可愛い人が姫だと」
 ボッと顔を赤くするスピカ。雪のように白かった肌を、淡いピンクに染めた。
「も、もう、まどかのバカぁ~……」
 スピカは呻いてから、ケンイチの方を向く。
「それで……えと、盗賊さんの名前は?」
 一瞬だけ目を細めるケンイチ。
「ボクは……ケンイチと言います」
「けんいち? 変わった名前ですね。東の国の人ですか?」
 東の国とは、ルーン王国と東側で国境を接している国だ。ジパンと呼ばれるその国は、ルーン王国と良好な関係を築いている。東の国出身の者は、髪や瞳の色が黒いのが特徴だ。
「……まぁ、そんなとこです」
「そうですか。まどかと一緒ですね。まどかはトーキ出身らしいですよ。けんいちさんはどこ出身なんですか?」
 ケンイチが足を止めた。伴い、スピカも停止しようとしたが、前に倒れそうになる。
「今夜はここで野宿しましょう」
 スピカを支えてやりながら、ケンイチが言った。
「の、野宿っ? 魔物がいるのに?」
「はい。どうやら森の中心付近に落下したみたいで、村や街に出るまでには時間がかかります。寝ないで過ごすわけにはいきません。ここに泊まりましょう」
「あぅぅ……」
 スピカは黒い森の奥を、目を凝らして見てみる。暗闇の中をなにかが動いたように見えた。
「きゃあ!」
 急いでケンイチの後ろに隠れた。ケンイチはスピカと同じ方を窺い、短剣を取り出した。
「『ガルライガー』ですね。かなり凶暴ですが安心して下さい。襲ってきてもボクが倒します」
「倒すって……殺しちゃうんですか?」
「……そうなりますね」
 鋭い視線を木々の隙間に送りつつ、ケンイチは答えた。その腕をスピカが掴む。
「だ、ダメです! 命を奪ってはいけません!」
 スピカの剣幕は激しかった。
「…………」
「他に彼らを退ける方法はないんですか?」
「……やつらは火を嫌いますから、たき火をすれば平気ですよ」
「たき火ですね! じゃあそっちにしましょう。わたし、燃えそうな枝を探してきますね」
 スピカはその辺に落ちている枝を拾い始めた。
 しばらくそれを傍観していたケンイチだったが、やがて彼もスピカの手伝いを開始した。
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追いつきました~!!

本格派のファンタジーってけっこう苦手な筈のfateが、するする楽しく拝読させていただくに至りました。(←変な日本語(ーー;)

スピカ姫の天然さ加減が良いっすね~
それから、ケンイチさんのどっか動じない性格が好きかも。

霊聴者(リスナー)とか、『調律師』とか。さすが音楽を扱う方の発想だぁ! と感心いたしました。
素晴らしいっす!!
その説明にドキドキしました。

二人で野宿のスピカ姫とケンイチくん。
こんな波乱万丈な展開になるとは!
続きを楽しみにいたします!!!

fateさんへ

ありがとうございまっす!!
本格ファンタジーが苦手なのにもかかわらず、ゆない。の拙作を読んでくださるなんて、fateさんは最高です! いや、以前からfateさんが最高の方であることは知っていましたが!

スピカとケンイチの冒険をこれからも見守ってくださいませ! ちなみに、ゆない。の作品の中でもスピカはちょっと変わった娘ですw

さてさて、今からfateさんのブログに直行します!

で、行ってみたのですが、なにやら『花籠』のページがリニューアルしてる! えと、ゆない。はどこまで読んでましたっけ……? 日が経ってしまったので……ごめんなさい。

こちらに失礼いたします(^^;

ゆない。さんは、あれっすよ。
『花籠』の(仕事)12にコメントいただいておりました。
ただ、はい。
外伝等が入ってややこしくなり、順番が複雑怪奇になってしまったので、続けて読めるように、まとめ編というのを再構成しました。
なので、そちらから続きを読んでいただけると良いかな、つまりは花籠1-10にコメントいただいた形でいたので、1-11からが続きになるかと思います(^^;

複雑ですみません(^^;

fateさんへ

いえいえ、ありがとうございます!
さっそくお邪魔させていただきます!!
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ゆない。と申します。

ゆない。

Author:ゆない。
ゆない。です! 作家を目指してます!

Author:ワキオ
ゆない。と共に作家を目指しています!

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