スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『復讐の幻想曲(ファンタジア)』5(ライトノベル)


 ルーン城三層目の廊下。
「待って下さい!」
 またもケンイチは女の子に行く手を阻まれた。
 ただし、今度の女の子は兵士ではない。水色のドレスに身を包んだ、金髪碧眼の美少女だった。
 構わず、ケンイチは短剣に手を回す。邪魔をするなら倒すという考えだ。
「わたしを助けて下さい!」
 しかし、女の子が言った台詞により、ケンイチの戦意は削がれた。腰に手を回したままの姿勢で、しばし静止する。
「わたしを助けて下さい!」
 小柄な女の子は必死にそう叫ぶ。ケンイチは無表情をわずかに変え、眉間に皺を寄せた。
「あの……一応言っておきますけど、ボクは盗賊ですよ?」
「それでもいいんです! 助けて下さい、お願いします!」
 女の子が頭を下げた。ケンイチの混乱は増す。
 そのまま、二人の間に沈黙が降った。
「姫ぇー!」
 離れた位置から、円火の声が聞こえた。
 それでケンイチは思い出す。円火が探している姫が、水色のドレスを着ているということを。
「あなたは城の者ですよね? 助けて欲しいなら、ボクではなくこの先にいる秋実さんって人に……」
「まどかじゃダメなんです!」
 女の子は顔を上げると、すごい剣幕でケンイチに迫った。
「城の人達じゃダメなんですっ!」
「……よくわかりませんが、ボクは先に行かせてもらいます」
 スルリと女の子の横を抜けるケンイチ。その前に五人の兵士が現れた。
 女の子はとっさに、近くにあった植木の陰に隠れた。
「見つけたぞ、盗賊。覚悟しろ!」
 兵士達は五人同時にケンイチに襲いかかった。
 ため息を吐くケンイチ。
「……ボク、急いでるんですよ!」
 黒いローブがバサリと翻った。腰のホルダーから五本のナイフが飛び出した。短剣よりも小振りのものだ。刀身に小さな穴があいている。
 五本のナイフは兵士達の脚を的確に射抜いた。その後、再び黒いローブの下に戻った。
 兵士達が倒れるのに合わせて、女の子が姿を現す。
「すごい、強いですね!」
 自軍の兵士、つまり味方がやられたというのに、女の子は嬉しそうだった。
「……それじゃ、ボクは行きますので」
 あきれたような眼差しを女の子に向けてから、ケンイチは一歩を踏み出した。
「あ、あの、待ってって……わ! きゃあ!」
 ドシンと、背後ですごい音がした。ケンイチは女の子が転んだのだと判断したが、歩みは止めなかった。振り返りもせず、ただひたすらに歩いていく。
「いたたた……あ! 待って下さいってばあぁぁあっ……!」
 起き上がった女の子がまた転んだようだ。しかも先程よりも盛大な音がした。
 足を止めるケンイチ。
「……えと……だからボクはあなたに構っている……っ!」
 振り向いたケンイチの視界に映ったのは、うつぶせになっている女の子と、さっきの衝撃により倒れそうになっている槍の束だった。壁に無造作に立てかけてあった槍が、鋭い刃を女の子に向けて落下する。
「危ない!」
 ナイフを操る時間はなかった。ケンイチは女の子を抱き、横に飛んだ。
 ガランガランと槍が床に転がる。そのうち何本かは、刃を地面に突き立てていた。
 もう少し遅れていたらと考えると、ケンイチは背筋に寒いものを感じざるを得なかった。小さく息を吐いてから、腕の中の女の子を確認する。
「助けてくれてありがとうございます! やっぱり盗賊さんですね、動きが素早かったですよ」
「…………」
 ケンイチはあきれることしかできなかった。先刻から、どうやらこの女の子は普通の人とは少し違うようだと理解する。
「あ!」
 自分の変な発言に気づいたのか、女の子が可愛らしい声を上げた。ケンイチの顔をのぞき込む。
「盗賊さん、怪我ありませんでしたか?」
「…………」
 ケンイチはがっくりと肩を落とした。ただ脱力しただけなのだが、女の子はそれをケンイチが怪我を痛がっていると判断したようだ。まんまるの目をさらに丸くし、ケンイチの肩を掴んだ。
「だ、大丈夫ですか? 助けを呼ばないとっ。誰か! 誰かき……むぐっ!」
 騒ぎ出す女の子の口を、ケンイチは片手で塞いだ。それから彼女を立たせてやり、自分も立ち上がる。
「とにかく、ボクは行きます。あなたはそこでおとなしくしてて下さい。そうすればさっきの女剣士さんが助けてくれますよ」
 女の子の返事を待たず、ケンイチは駆け出した。
「待って下さい!」
 女の子の叫びにも動じない。どんどん距離を離していく。
「ま、待って……うわぁ!」
 また女の子が転んだようだが、止まらない。
「行かないで……行かな……置いてかないでっ!」
「っ!」
 ケンイチは急停止した。振り返ることはまだしない。
「わたしを置いていかないで! 連れていって!」
(ボクを置いてかないで! 連れていってよ!)
 女の子の声に重なる声が、ケンイチの脳内に響く。
「お願いします! 行かないで下さい!」
(お願い! 行かないで!)
 ケンイチが振り向くと、すでに女の子が近くまで来ていた。その姿が、小さな少年とダブる。
「っ!」
 ケンイチは思わず目を逸らしていた。
 その時だ。
『ケンイチくん、聞こえるかいっ?』
 左手首につけている無線から声が響いた。シェイドのものだ。かなり緊迫した様子に、ケンイチは顔をしかめる。
「はい、聞こえます」
『そうか、無事でよかった。いきなりだけど、逃げるよ。すぐ船に戻ってきてくれ!』
「え? は、はい……」
『僕達はもう船の近くに来てる。着き次第飛び立つから、急いでくれ!』
「……わかりました」
 爆音とともに無線は終わった。
「…………」
 進もうとしていた先を、しばし睨むケンイチ。一瞬だけ顔を歪めてから、来た道を引き返し始めた。
 その手を女の子が掴む。
「わたしも一緒に行かせて下さい! 城の外に出たいんです!」
「まだ言ってるんですか? そんな場合じゃ……」
「お願いしますっ……!」
「!」
 女の子は泣いていた。大きな瞳にいっぱいの涙を溜め、痛みを伴うほどケンイチの腕を握り締めている。
「……もう、なんなんですか……」
 頭をかいてから、ケンイチは女の子の手を握り返した。
「外に出るまでですよ? では、しっかりついてきて下さいよ。ボクの手を離さないように」
「う、うん」
 戸惑いながらも、女の子はしっかりとケンイチの手を握った。それを確認してから、ケンイチは走り出した。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

今週もやってきました!w
最近ブログはやらないで
Twitter╋コメントしかやっておりませんw

kitutukiさんへ

いらっしゃいませ!
いつでも来てください! 大歓迎ですよ!

ゆない。もいい加減ツイッターを始めたほうがいいんでしょうか?w
流行に乗り遅れてる……w
プロフィール
ゆない。と申します。

ゆない。

Author:ゆない。
ゆない。です! 作家を目指してます!

Author:ワキオ
ゆない。と共に作家を目指しています!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
読者様カウンター
訪問ありがとうございます!
ランキング
ゆない。のランキングです。

FC2Blog Ranking

ブロとも一覧
ゆない。のブロともですよ!

kitutukiブログ~みんなの趣味日記~

Stories of fate

君の知らない玉手箱

草を食む時間 ~The Grazing Time~

ajggjgjgdrikdikfff

月と氷

ようこそここへ!

夢の島を遊ぶ

あかねいろ*

かき氷2色スペシャル

カミツレが咲く街で

空のぺえじ

狂原さんのクルクル日記
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
3811位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
オリジナル小説
950位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ゆない。がオススメするブログです! こちらもぜひ!
ブロとも申請フォーム
皆さんブロともになってください!

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。