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『カギビト』49(ライトノベル)


 『ロッカーズロッカー』。Aホール。ステージ上。
 ライブ開始まで五分を切った。
「どうしよ~。もうお客さん来てるよ」
 ステージにかけられた幕の間から、楽美は外の様子を窺った。ホール内はすでにラッシュ時の満員電車のようだ。
「ひ、氷鉤先輩……」
 すでに準備を終えている愛凛は、ギターのネックをギュッと握った。
「まったく蒼眞くんは……。ヒーローは遅れて登場するとでも言いたいのかな?」
 軽口を叩く正則も声のトーンは低め。少なからず蒼眞を案じているようだった。

 Aホール。ステージ近く。
「氷鉤くん……」
 緋色は呟いた。
 もう一つ、彼女の脳内でも呟き。
[蒼眞くん……。やっぱりなにかあったのかな?]
 朱色の声はどうしようもなく小さい。
 二人の少女は、揃って俯いた。
「ひーいろ!」
 緋色の背中に、快活な声が浴びせられる。
「舞依ちゃん……?」
 振り向いた緋色の前にいたのは、清谷舞依だった。
 舞依は半ベソの緋色を見ると、表情を曇らせた。
「緋色、どうしたの?」
「うん……氷鉤くんがまだ来てなくて……。このままじゃライブ中止になっちゃうし、もし、氷鉤くんになにかあったんなら心配だよ……」
 シュン、と緋色は小さくなった。
「たしかにそれは大変ね……でも」
 舞依は緋色の肩をポンと叩く。
「大丈夫よ。氷鉤は来るわ」
 やけに自信たっぷりと告げる舞依に、緋色は眉を寄せる。
「どうしてそんなこと……」
 と、そこで緋色に疑問が生まれた。
「あれ? そういえばなんで舞依ちゃんがいるの?」
 当然の質問に、舞依はシレッと答える。
「氷鉤に誘われたからよ」
「え?」
 目を丸くする緋色。
[まさか、蒼眞くん、舞依ちゃんのことが……]
 動揺する朱色。
 彼女の不安は、次の舞依の言葉で解消された。
「なんかあたし以外にもチケット渡してたわよ。たしか、桐崎だったかしら?」
「?」
 緋色の疑問はさらに膨れ上がった。

 『ロッカーズロッカー』近くの路上。
 佐山と木塚はほぼ同時に目覚めた。
「……俺らなにしてたんだっけ? ワットイズ俺達?」
 木塚は頭をボリボリと掻いた。
「さぁ?」
 両手を上げる佐山。
 彼は裏人格の佐山ではなく、表の佐山だ。ちなみに今の彼にはもう裏の人格はなく、『鍵人』の記憶もない。もちろん、闇もない。
「あれ? これなんだろう?」
「ん?」
 佐山が指差したものを、木塚が拾い上げた。
「チケット?」
 それはまさしくチケットだった。『コバルトブルー・ライブ』、と書いてある紙が二枚。
「僕達、ここに向かってたのかな?」
 佐山がチケットの裏を見ると、ライブ会場はここのすぐ近くだった。
「う~ん、そうかもな……。とりあえず行ってみっか。もう始まっちまうしな」
「そうだね」
 チケットを握り締め、二人は駆け出した。

 『ロッカーズロッカー』Aホール。
 ステージの幕が開いた。
「わあぁぁあぁぁぁぁぁー!」
 男の声、女の声、轟音がホール内に反響する。
 しかし、その爆音のような声は、幕が完全に開いた瞬間、水を打ったように静かになった。
「……あははは。やっほーみんな……」
 ステージの上には三人しかいなかった。ドラムの正則。リードギターの愛凛。ベースの楽美だけだ。蒼眞は不在だった。いつも蒼眞がいる場所には、苦笑を浮かべている楽美がいる。
「あれ? 今日は『ラック』が歌うの?」
 『ラック』とは『コバルトブルー』での楽美の呼び名だ。バンドのホームページでメンバーの交代は知らせてあったので、ファンは彼女を認知していた。
「『クール』様は?」
「まだ準備中なのかな?」
「ちょっと、『クール』を出してよ!」
「『お嬢』可愛い……」
「『ラック』の方が可愛くね?」
「もう一度『姫』に会いたい……」
 様々な声が溢れ、瞬く間に喧騒に呑まれていくホール内。
「えーとね……『クール』はまだ準備中みたいだから……ちょっと待っててね」
 楽美がみんなをなだめるも、騒ぎは収まらない。

「あーあ、どうしよう?」
 騒ぎ出す人々に紛れ、困惑する緋色。
[蒼眞くんに会いたいな……]
 彼女の脳内で朱色が呟いた時、ホール内にメロディが響いた。煌びやかアルペジオ。とてもクリーンなギター音だ。
 再び静まり返る観客。
 その場にいる誰もが、ある男の登場を予感した。
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遅れてきたヒーロー!

こらこらこら、チケットをあちこちに配って歩いてないで、さっさと会場に来んか!
緋色ちゃんが心配しているだろう!

でも、そこで、彼がしたかったことを感じてなんとなく心がほかっとしますなぁ。
闇と関わった相手に、いろんな想いを込めているんだろう、と。

緋色ちゃんより朱色ちゃんの方が、関わりが深かった分、蒼眞くんへの想いが強いんですね。
うんうん、可愛いなぁ!!!

いやいや。
あれっすよ。ゆない。さんは、物語の流れの中にいろんな説明したいことを華麗に盛り込んで流して、淀みを作らないんです。
感情のボリュームが高い、というのか?
ほら、fateは日本語がけっこう不自由だから、うまく説明出来ないんだけど、そういうセンスが素晴らしいっすよ~~~(^^)

fateさんへ

訪問、そしてコメント、いつもありがとうございます!!
コメントをいただくたびにガッツポーズをしているのはここだけの秘密ですww

『こらこらこら、チケットをあちこちに配って歩いてないで、さっさと会場に来んか!』←このツッコミでチケットをいそいそと配る蒼眞の姿が浮かび、笑ってしまいました!w

毎回もったいないお言葉をいただけて光栄です!
fateさんが日本語が不自由なんてことはないですって!w
fateさんこそ登場人物の感情を表現することに長けていますよ! そして物語のメッセージも確かに伝わってきます!

そろそろ

終焉間近かな。
実はこちらを先に読ませていただいてたんですよ。そして45くらいで追いついたため、その後『SKY GARDEN』を読ませていただいてました。 であちらを読了後、またこちらを読ませていただいております。
二作品を比較すると、若干『カギビト』が対象年齢高めなのかなぁって感じます。

続き、楽しみにしておりますね。

シャカシャカシャカシャカ。
大音量の蒼眞くん。
シャカシャカシャカシャカ。
難聴には注意しましょう。

まるい色さんへ

そ、そうだったんですか! 先にこちらを読んでくださったのですね!
本当にありがとうございます!
はい! こちらの作品のほうが対象年齢は高めに設定しています。
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです!

『難聴には注意しましょう』とのご忠告、笑いましたww
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