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『カギビト』47(ライトノベル)


 ライブ開始まで二十分。
 蒼眞を除いた『コバルトブルー』のリハーサルが終わった。
 すごいなぁ……。
 普通、歌のない曲はあまり人に感動を与えることはない。もちろん、インストなどは歌がないこと前提なので、それだけで楽しむことができる。しかし、歌があるはずの曲に歌がない、いわば伴奏だけの曲ではまずそれはないだろう。
 だが、緋色は感動してしまった。それほどまでに『コバルトブルー』というバンドは素晴らしかったのだ。
[それぞれがそれぞれの世界を構築しててすごいね。しかもそれらが合わさることでまた新たな世界が見えてくるよ]
 朱色も感嘆の声を上げた。といっても緋色の脳内で、だが。
 うん、ほんとそうだね。
 緋色は拍手した。それは『コバルトブルー』に対する称賛と感謝だ。
 楽美はニコリと笑い、舞台袖にいる緋色に駆け寄る。
「ありがとう緋色ちゃーん!」
「あぅ……!」
 いきなり抱きつく楽美。豊かな胸が緋色の頬を締めつけた。
 慌てて止めに入った愛凛は、楽美の服を軽く引っ張る。
「ら、楽美さん……」
「おお? しまった、またやっちゃった!」
 やっと楽美は緋色を解放した。すぐさま頭を下げる。
「ごめん緋色ちゃん!」
「あはは……大丈夫ですよ」
 乱れた髪を元に戻しながら、緋色は微笑んだ。
 と、そこに観客がいないにも関わらず舞台上でポーズをとっていた正則が、彼にしては真剣な表情で近づいてくる。
「緋色くん、君が悪いんだよ」
 唐突にそんなことを言う正則に、緋色は目をパチクリさせた。
「君が愛らし過ぎるからいけないんだよ。楽美くん以外の人だって抱きつきたくもなるさ」
「は、はぁ……すいません」
 なんとなく謝ってしまう緋色。
「うん、そういうわけだから……僕も君に抱きつきたーい!」
「ひぃっ……」
 正則は猛ダッシュで緋色に向かい、
「ぐえっ!」
 そしてコケた。足元にあったコードに引っかかったのだ。
 しばらく正則は痛がっていたが、やがて動かなくなった。
「「「…………」」」
[…………]
 女の子四人は沈黙。正則は最初からいなかったことにした。
「あの、前から気になってたんですけど、あれはなんなんですか?」
 緋色が指差す方へ、楽美と愛凛は目を向ける。
「ああ、あれ? あれはエフェクターって言うんだよ」
「エフェクター?」
 床の上にある黒板消しサイズの機械を見て、緋色は首を傾げた。
「エフェクターっていうのはね、ギターやベースの音を変えるものなんだ。愛凛ちゃん、緋色ちゃんに見せてあげて」
「は、はい」
 愛凛はギターを担ぎ、アンプのスイッチを入れた。その後、ギターを鳴らす。
 チャラーンと、あまり迫力のない音が響いた。
「これがギター本来の音ね。これにディストーションのエフェクターを使うと」
 楽美に促され、愛凛は足元のエフェクターを踏み、ギターの弦を撫でた。
 カッコいい。
 素直に緋色はそう思った。ギンギンに歪んだ音は、とにかくカッコいいのだ。
「ま、こんな風に音色を変えられるんだ。種類もたくさんあるよ。ディストーションより歪みの弱いオーバードライブとか、音が後から追いかけてくるディレイとか、音が揺れるトレモロとかね。他にもまだまだあるよ」
「へぇ~」
[奥が深いね]
 緋色と朱色は揃って感心した。
 一つ、朱色には気になることがある。
[蒼眞くんはどんなエフェクターを使ってるのかな?]
 あ、わたしもそれ思った。
 そんな二人の考えを察したかのように、楽美は告げる。
「蒼眞くんの使ってるエフェクターはシンプルだよ。オーバードライブ、ディストーション、ディレイくらいだね。しかもオーバードライブはブースターとして使ってるから、ほとんど他の二つがメインだよ」
「ブースター?」
 専門用語ばかりで緋色は混乱する。それは朱色も同じようで、彼女は先程から沈黙していた。
「ブースターっていうのはね、ギターソロの時みたいな『ここぞ』っていう瞬間にギターの音量や歪みを上げることだよ」
 楽美はサラリと教えてくれた。
「はあ……」
 しかし緋色にはあまりピンとこない。同様に朱色にも。
 難しい顔をする緋色を、楽美はビシッと指差す。
「ま、要するに目立つってことだよ!」
「あ、なるほど……」
[そうなんだ]
 納得してしまう緋色と朱色。
「ら、楽美さん、まとめ過ぎです……」
 ギターを肩からはずしながら、愛凛は小さく呟いた。
 ライブ開始まで後十五分。
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間に合うとは思うけど

ちょっと心配。
おおおおう、蒼眞くん、大丈夫か?
けっこうボロボロになって登場して、演出だよ、とかって涼しげに笑いそうな気が…

じゃなくって(--;
緋色ちゃんと朱色ちゃん、会話が出来るようになったら二人の相違が目立たなくなりましたね。
そういう人格って、人格として存在し続けられるのかな?
もしかして、朱色ちゃんは消えちゃう(緋色ちゃんと同化してしまう)のかな?

などと、余計な先読みばかりしてしまいましたが、もちろん、こんなタワゴトはかる~く無視して進めてくださいませ。
fateごときが考える安直なラストではなく、ゆない。さん、独特の世界観をわくわくお待ちしております(^^)

fateさんへ

毎回の訪問&コメントありがとうございます!

いえいえ、タワゴトなんかではありませんよ! 読者がそういうふうにいろいろ考えてくださったほうが、ゆない。としては嬉しいのです!

緋色のことは、まだ伏せておきます。というか、どうせすぐにラストシーンに突入しますが……w
ではでは、続きをお楽しみに!

本当にいつも感謝しています!
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