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『カギビト』40(ライトノベル)


Lock4、アンネイムド
 存在してはいけない。
 自分は存在してはいけない。
 いや。
 存在しないように存在しなければならない。
 光に対する影のように存在しなければならないのだ。
 光を認識させるには影が必須。影がなければ光は見えない。影があることによって初めて光は光でいられるのだ。
 ただ光のために、それが自分の使命。
 そのためには自分は闇になる必要がある。自分は影を濃くし、光をより鮮明にするのだ。
 だが、いくら自分が闇を深めていっても限界というものがある。もっともっと光を強めたいと思っても、自分の闇だけでは足りないのだ。
 それなら、どうすればいい? 光が輝きを増すためにはどうすればいい?
 自分の闇だけでは不足してしまっている。
 自分は苦悩した。ここで終わりなのかと絶望した。
 光がなければ自分は存在できないからだ。光のために、ただ光を強めるために存在していた自分という闇。その存在理由がなくなってしまうからだ。
 そんな時だ。力を手に入れたのは。
 どうしてこの力が自分にあるのかなんてわからなかった。だがそんなことはどうだっていい。これでまた光のために働けるのだ。自分は存在していられるのだ。
 力を得た時、とても素晴らしい考えが浮かんだ。闇を濃く深く、ひいては光を濃く深くする方法だ。
 自分の闇だけでダメなら他人の闇を利用しよう。他人の闇を引き出すのだ。引き出して、光の前にさらすのだ。それで再び光は瞬き、輝く。
 そうだ。そうしよう。人の闇を開くのだ。
 この想いで。
 人の闇を開くのだ。
 この闇で。
 人の闇を開くのだ。
 この力で。
 人の闇を開くのだ。
 この鍵で……。

 駅前。カップル達の待ち合わせ場所として有名な時計塔の下。
「…………」
 緋色は顔を引きつらせながら立っていた。彼女の周りにはカップルカップルまたカップル。
 時刻は午前十時十分前。緋色は蒼眞と十時にここで会う約束をしていた。
 はぁ……。こんな場所にするんじゃなかった。
 この集合場所を選んだのは緋色だった。昨夜蒼眞とメールをして決めたのだ。待ち合わせといったらここかな、程度の軽いノリだった。
 しかし、現在、緋色は猛烈に後悔していた。
 これじゃあ完ぺきに付き合ってるみたいじゃん!
 気づいてまた顔を赤くする緋色。俯くと、自分のスカートの裾が見えた。
 服装だって無駄に悩んじゃったし……。
 本日の格好は、上は裾の短い灰色ジャケットに黒いネクタイ、下は白いバルーンスカートというものだ。自分ではシンプルかつキュートに仕上げたつもりだ。
「悪い悪い、待った?」
 聞こえてきた男性の声で、緋色は咄嗟に顔を上げる。一瞬蒼眞かと思ったが、見てみるとまるで違う人だった。
 男は緋色の隣にいた女性と会うなり、いきなりキスをした。
 えぇ?
 緋色は叫び出しそうになるのを必死に耐える。と同時に全力で顔を逸らす。
「お待たせしてすいません、夏代さん」
 緋色の目の前に蒼眞の顔があった。
「ひぁっ……?」
 突然悲鳴を上げた緋色に驚いたのか、蒼眞は目を見開いた。
「ど、どうしたんですか?」
「へ? え、ううん。なんでもない!」
 明らかになんでもある様子で緋色は首を振った。高い位置で結んだ髪がピョンピョン跳ねさせる。
「ほ、ほら、早く行こ?」
 恥ずかしさと気まずさを打ち消すために、緋色は蒼眞の腕を引いていち早くこの場を離れようとする。
 そのまま時計塔を離れ、ある程度行ったところで二人は止まる。目の前には小洒落た喫茶店があった。緋色は蒼眞の腕から手を離し、その指を喫茶店に向ける。
「ここで舞依ちゃんと会うことになってるんだ。三十分に。氷鉤くんのことは伏せてあるから安心して」
「そうですか、わかりました」
 蒼眞は頷いた。
 緋色と蒼眞の目的は『起爆屋』を見つけることだ。そのために今までやつの被害にあった人達に話を聞く必要がある。まずは舞依だ。
「それでは、今からボクが言うことを清谷さんに訊いて下さい」
「うん、わかった」
 蒼眞は質問の内容を緋色に教えた。緋色は頷く。
「ボクは近くに隠れています。なにかあったら携帯に連絡して下さい」
「りょーかい」
 緋色は敬礼した。
「あ、夏代さん」
「うん?」
 歩き出そうと勇んでいた緋色は足を止めた。蒼眞に振り返る。
「その服、とても似合ってますよ」
「へ……?」
 緋色の目が点になる。時が経つにつれて顔が上気していく。
「また後で会いましょう」
 そう告げると、蒼眞は去っていった。
「…………」
 未だ動けない緋色。
 あれ? わたしなんでこんなにドキドキしてるんだろ?
「ひ~・いろっ!」
「ふわぁ!」
 突然現れた舞依は緋色を抱き締めた。頭をくしゃくしゃと撫でる。
「なにボケッとしてたの?」
「う、ううん、別にっ」
 緋色は舞依の抱擁から脱出。焦った様子で喫茶店へと向かう。
「……? なにかしら?」
 呟いてから、緋色の後ろに舞依も続いた。
 そういえば昨日から驚いてばっかだな、わたし。
 そんなことを考えながら、緋色は喫茶店に入っていった。

 蒼眞は緋色達がいる喫茶店向かいのファミレスにいた。彼のヘッドフォンはいつものように音漏れしている。
 シャカシャカシャカシャカ。
 その騒々しさに他の客は蒼眞を一瞥する。だが、彼の顔を見てすぐに目を逸らした。蒼眞の瞳が異様に鋭いからだ。まるで見た者を凍りつかせるかのような輝きを放っている。
 シャカシャカシャカシャカ。
 周囲の人達みんなが蒼眞を敬遠する中、ファミレスの女性店員だけは彼を見ていた。というより見とれていた。なぜなら、彼のスタイリッシュな髪型、研ぎ澄まされた表情がとてもカッコよかったからだ。危険な香りさえも魅力となっている。
 シャカシャカシャカシャカ。
 蒼眞の右手には蒼い鍵が握られていた。
 シャカシャカシャカシャカ。

 喫茶店。窓際の席に緋色と舞依はいた。机には紅茶やケーキが並べられている。
 緋色は蒼眞に言われたことを反芻する。舞依に訊かなければならないことは三つあった。
 一つ目は、最近記憶を失ったことがないか。ただしこれは緋色と経験した記憶喪失以前に限る。蒼眞がやった記憶消去以外で他にそういうことがあったかどうかだ。
 二つ目は、気持ちに変化が起きたのはいつなのか。ここで言う気持ちの変化とは闇を開かれた時のことを意味する。つまり、いつ悩みやイライラや悲しみが強くなったか、ということだ。
 三つ目、これが一番大事だ。最近印象に残った、あるいはなんとなく気になった人は誰か。舞依が蒼眞を気になったように、記憶を閉ざされても覚えていることはある。その僅かな意識から犯人を割り出すのだ。
 『心鍵』を使って記憶を読めないの?
 昨晩、緋色は蒼眞にメールでそう尋ねた。閉ざされた記憶を蒼眞の『心鍵』で開けばいいと、そう思ったのだ。
 しかし蒼眞の答は『ノー』だった。『鍵人』が閉ざした記憶はその『鍵人』しか開けることができないのだそうだ。鍵穴が合わないんです、と蒼眞は言っていた。
「それで緋色、話ってなに?」
 チーズケーキをパクつきながら、舞依が緋色を見た。
「うん、ちょっと訊きたいことがあるんだ」
 緋色はフォークを置き、ボールペンに持ち替えた。片手には手帳が握られている。
「な、なによ?」
 まるで事情聴取をする警察のような緋色に戸惑いつつも、舞依も食事を中断した。
 緋色は思考。どうやって話そうか悩んだが、結局直接訊くことにした。
 どうせ氷鉤くんが記憶を消しちゃうしね……。
 『鍵人』の存在は非公式。故に他言無用。闇を視ることができる緋色は特別だが、それ以外の人には決して知られてはいけないのだ。
 緋色は苦笑した。親友を騙しているみたいで少し後ろめたい。
 でも。舞依ちゃんのためでもあるんだもんね。だったら頑張らなきゃ。
 気合いを入れ直し、緋色は話を開始する。
「あのね……」
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