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『カギビト』34(ライトノベル)


 午後十時、緋色は自室のベッドで横になっていた。寝ているわけではなく、むしろ目はぱっちりと開けたままだ。白いだけの天井をじっと眺めている。
 『アレ』はなんだったんだろう?
 緋色の頭に浮かんだのは舞依、楽美と、そしてもう一人。
 舞依ちゃんと楽美さんの『アレ』を見た後なんだよね。不思議なことが起きたのは。
 緋色が今までのことを振り返ってみると、やはり辿り着く解答は氷鉤蒼眞だった。
 緋色は部屋の電気を消し、瞳を閉じる。視覚情報をなくして一層思考に集中した。
  『アレ』と氷鉤くんが揃った時が鍵だね。きっとまたなにかが起きるはず。そしてそれは明日の可能性が高い。
 緋色は決意した。やはり蒼眞に全て訊くことにしたのだ。彼ならなにか知っているはずだという確信がある。
 明日への期待と不安が入り交じる中、いつの間にか緋色は眠りに落ちていた。

 翌日。緋色達の教室。昼休みのこの時間、クラスのみんなはあちこちで楽しそうに昼食を開始している。
 シャカシャカシャカシャカ。
 普段と同じく蒼眞は教室の隅に一人でいた。食事をとる時でも、音漏れの激しいヘッドフォンはつけたままだ。
 その前には木塚、佐山、舞依がいて、三人で昼の一時を過ごしていた。
 シャカシャカシャカシャカ。
 木塚は何回も後ろを振り向き、イライラした様子で蒼眞を見ている。ほぼ毎日行っている音漏れの注意を、本日もするつもりなのだ。
「おい、ひか……」
「氷鉤くん」
 しかし木塚の声は可愛いらしい声で上書きされた。
 木塚はそれに素早く反応、声のした方を確認する。そこには想像通りの愛らしさがあった。
「緋色ちゃん!」
「「えっ?」」
 興奮する木塚の叫びに、佐山、舞依も反射的にそちらを見やる。
「な……なに?」
 いきなり好奇の視線を浴びせられ、蒼眞の背後にいた緋色は戸惑った。
「緋色どうしたの? あたしになにか用?」
 舞依が問うも、緋色は首を振った。
「「じゃ、じゃあ……!」」
 木塚と佐山は同時に立ち上がる。二人とも『まさか自分に用があるのか?』と淡い期待を抱いているのだ。
「なわけないでしょ!」
 舞依は夢見る男子二人の頭をぶっ叩き、厳しい現実を突きつけた。
「バカ二人はほっといて、どうしたの、緋色?」
 バカ扱いされた男共はケッ、とそっぽを向く。しかし、目だけはチラチラと動かし、緋色の様子を窺っていた。
「うん。あのね、氷鉤くんに用があって……」
 緋色はもじもじしながら蒼眞を指差す。その態度に舞依はピンときた。そっと緋色に耳打ちする。
「……あれ関係?」
「うん……。直接氷鉤くんに訊いてみることにした」
 神妙な面持ちで緋色は頷いた。全てを理解した舞依は蒼眞のヘッドフォンを取る。
「……なんですか?」
 ゆっくりと蒼眞は顔を上げた。メガネの奥の瞳は相変わらずどんよりしている。
「緋色があんたに用あるって」
「夏代さんが? ボクに?」
 長い前髪を揺らして蒼眞は首を傾げた。緋色を一瞥する。
「ちょっと話したいことがあるから、来て欲しいんだけど……」
 じっとりと蒼眞は緋色を観察。ややあってから頷いた。
「わかりました」
 蒼眞は席を立ち、緋色についていく。二人は教室を出ていった。
「「…………」」
 木塚と佐山は放心していた。『なぜ緋色ちゃんが蒼眞を?』頭の中はそれでいっぱいだった。
「なにあんた達? バカみたいに口開けて?」
 心ここに在らずの男子二名を無視し、舞依は食事に戻る。手作りの野菜炒めを頬張った。
「き……清谷は緋色ちゃんが心配じゃないのかよ……?」
「別に」
 簡単に答えつつ、舞依は水筒の烏龍茶を飲む。やや苦い液体が喉を通り過ぎた。
「別に、だって。薄情なやつだよな。清谷イズアイスガール」
「うんうん」
「う・る・さ・い!」
 ギャーギャー騒ぐ男共を一睨み。舞依は二人を黙らせる。
 慌てて木塚と佐山も食事に戻った。
「緋色……」
 内心、舞依は緋色のことが心配だった。もちろん木塚や佐山と同じ理由などではない。心配なのは蒼眞の出方だ。直接真実を問い質すだろう緋色に、蒼眞がどう出るかが心配なのだ。
 舞依はもう一度お茶を飲む。ほのかな苦味が口いっぱいに広がった。
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遂に…っ

遂になんだというのか、fateくん。

いや、単に緋色ちゃんが出てきてテンションがあがっただけです(^^;
だけど、彼女がいろいろ疑問に思い、いろいろ聞きたいことはあっただろうことは予想に難くないっ!
っていうか、fateもいろいろ聞いてみたいっ
ここは緋色ちゃんに任せた方が良いであろう!

では、このまま次へ~

fateさんへ

続けて読んでくださって、本当にありがとうございます!
やはり連載が長すぎたせいか、読者は減っていくばかり……w

ですが!

少しでも読者がいる限り、ゆない。は連載を続けます!
どうかお付き合いのほどを、お願いします!

あ、無理にではないので、気が向いたときにでも読んでください!w
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