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『カギビト』31(ライトノベル)


「普通いきなり殴るかっ?」
 真っ赤に腫れた頬をさすりながら、男子生徒、桐崎将(きりさきしょう)悟(ご)は舞依を非難した。男であるにも関わらず、彼の声は高く、まるで変声期を迎えていないみたいだ。
「あんたが落ち着かないから悪いのよ」
 一方の舞依は謝る気なし。めんどくさそうに片手を払う。
「おまえ、この暴力女がっ!」
「なんですって?」
「ちょっと二人とも!」
 ケガ人が出そうなので緋色は止めに入った。また桐崎に気絶されては話が聞けない。
 桐崎が倒れた場所から一番近い教室。そこに緋色達はいた。とりあえずなにが起きたのか桐崎から聞いているのだ。と言っても先程から全然進んでいない。
「ごめんね桐崎くん。で、なにがあったの?」
 舞依の代わりに緋色が謝罪。とにかく話を前進させなければならない。
「そんな……夏代は全然悪くないって……」
 桐崎は必死に手を振った。少し顔が赤くなっている。
「はは~ん……」
 舞依は顎をさすり、ニヤける。
「な、なんだよ……?」
「あんた緋色のこと好きでしょ?」
「なっ……?」
 おもしろいくらい桐崎は動揺した。顔は真っ赤になり、坊主頭とあいまってさながらトマトだ。全身を硬直させている。
「やっぱりね」
「ちっ……ちげーよ! だ、誰が緋色ちゃんのこと……」
 突然桐崎は停止した。真っ赤から真っ青に変化する顔。しばらくしてから一言呟く。
「あ……」
 『墓穴を掘る』。その場の三人に共通して浮かんだ単語がそれだった。
 しばしの沈黙。
「はぁ……」
 響いたため息は舞依のものだ。俯いている桐崎の頭を小突く。
「別にあんたが緋色を好きなんて意外でもなんでもないわよ。クラスの、ううん、多分学校中の男が緋色を好きなんだからね」
「舞依ちゃん……いくらなんでもそれは……」
 舞依の大袈裟な言い方に、緋色は苦笑するしかない。
「大体あんたみたいなやつに緋色は渡さないわ。さ、早くなにが起きたのか話しなさい」
 顔を上げる桐崎。
「……なんか納得いかないけど……まぁいいか」
 なんとも微妙な表情で、桐崎は話を始めた。突拍子もない一言から。
「俺、殺されそうになったんだ……」
「「えぇっ……?」」
 緋色と舞依は揃って叫び、大きくのけ反った。桐崎のことだからどうせくだらないことだろうと、二人とも思っていたのだ。だがどうやらそうではないらしい。
「ど、どういう……」
「殺されそうになったんだって! せ、生物室にいた野辺(のべ)に!」
「野辺……? 野辺ってあたし達と同じクラスの?」
「そう、野辺彰人(あきひと)だ!」
 野辺彰人は緋色達と同じクラスの生徒だ。一人しかいない生物部に所属していて、クラスでは蒼眞と同じように暗いグループに振り分けられている。
「嘘くさっ……」
 舞依は桐崎の話をまったく信じていない様子だ。目をすがめている。
「うん……。だってあの野辺くんでしょ?」
 緋色も少し疑問に思い、首を傾げた。
 確かに野辺くんは暗い人だけど、人を殺そうとするなんて大胆なことはできないよね。
「信じてないのかよ? じゃあ証拠を見せてやる。生物室に来い」
 桐崎は鼻息荒く、勇んで教室を出て行く。緋色達は一度顔を見合わせ、結局ついていくことにした。
「行くぞ?」
 まるで敵地に飛び込む前の兵士のように、桐崎は緊張した様子だ。ごくりと唾を飲んでから、目の前のドアに手をかけた。教室の名は『生物室』、緋色達のような一般生徒にはあまり馴染みのない場所だ。
「「「うっ……」」」
 突入後、三人は揃って鼻をつまんだ。というのも室内がかなり臭いのだ。ツーンと鼻を刺激する生臭さがある。
その悪臭漂う教室の中心に、白衣を着た男子生徒の姿があった。なにやらブツブツと呟いている。
「やっぱり……内臓は……だ」
 やたらと低くてくぐもった声。背中しか見えないが、彼は間違いなく野辺彰人だった。
「ほ……ほらな。なんかやばい雰囲気だろ?」
「……そうね」
 桐崎の意見に舞依は同意。小さく頷く。緋色もただならぬ雰囲気を確かに感じていた。
 ビビりながらも緋色達は徐々に野辺に近づいていく。
「ひぃっ……?」
 緋色はなにかを踏んでしまった。足元を確認してみると、それは手術などで使うメスだった。刃に赤い液体がついている。
「ん?」
 その物音で野辺が振り返った。
「「ひいぃぃぃっ……?」」
 緋色と舞依は思わず絶叫してしまった。なぜなら、血塗れなのだ。野辺の白衣が、野辺の口の周りが、真っ赤な鮮血で彩られているのだ。しかも手にはメスを握っている。
「自分が……どうか……した?」
 自身のことを『自分』と呼び、途切れ途切れに話すのは野辺の特徴だ。その喋り方が緋色達の恐怖をさらに増大させる。
「こ、これだよ。こんな感じで俺にも向かってきたんだよ」
 桐崎は震える手で野辺を指差した。
「これはたしかに……」
「怖いかも……」
 三人はジリジリと後退する。
「どうした……のさ?」
 連れて野辺が近づく。
「ど、どうしたじゃねぇ! おまえ、その服と口元の血はなんだよ?」
「え……? これ……? これは……あれだよ」
 野辺がメスを向けた先は机の上だ。そこには謎の物体があった。
「な、なんだよ、あれは?」
「フナ……」
「HU……NA……?」
 即答する野辺に対し、桐崎は外人のような発音。両腕を上げ、わからないというポーズをとる。
「フナ……の……解剖……だよ」
 野辺は机の上にある物体を持ち上げた。すると、それは紛れもなく魚だった。
「あ、なるほど」
 緋色は胸を撫で下ろした。もしあれが人間だったらシャレにならなかったが、それはまったくの誤解だったようだ。
「脅かさないでよ……」
 舞依は長い息を吐いた。安心と、桐崎の勘違いに対するあきれだろう。
「だったらその口の周りの血はなんだよ? 解剖だけならそんなとこに血がつかないだろ?」
 桐崎はまだ殺人の線を疑っているようだった。
「え……口の周りに……?」
 野辺は口元を拭い、手についた赤い液体を見る。その後少し首を捻り、あ、と漏らした。
「これ……ミートソース……だ」
 桐崎は絶句。代わりに緋色が問う。
「ミートソースってパスタとかの?」
「うん……そう。昼に食べた……から」
 小気味良い音が室内に響いた。舞依が桐崎の頭をぶっ叩いたのだ。
「桐崎っ、人騒がせよ!」
「す、すまん! でもさっきはマジで殺されるかと思った……」
 桐崎は床にヘタレ込んだ。額には汗が浮かんでいる。
「まぁまぁ舞依ちゃん。なにもないならよかったじゃん」
「そうね」
 緋色と舞依が野辺を見ると、彼はすでにフナの解剖に戻っていた。よく聞こえないがまたなにやら呟いている。もう誰も近づけない不気味さだ。
「無駄な時間過ごしたわ。緋色、帰ろ?」
「うん」
 緋色と舞依はさっさと生物室を出た。もう生臭い教室にいる必要はない。
「ま、待ってくれっ……」
 桐崎も急いで二人の後を追う。
 去り際、緋色は生物室をチラリと覗いてみた。室内には野辺だけだ。フナは次々と捌かれている。それに連れて、野辺の口はつり上がっていった。
 ひぃ……!
 緋色は足早にその場をあとにした。
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危ない…

危ないよ、この人~
いや、怪しいを既に通り越してヤバいでしょう!

と、fateに言われても説得力ないことこの上ないっ

でも、新展開にわくわく…よりもやはり背筋がぞくぞくしております~(^^)
だけど、大分、免疫出来ました(^^;

緋色ちゃん、可愛いなぁ!
ということで、今日は帰ります。
クリスマスだしね。
やはり可愛い女の子は良いよなぁ(^^)

No title

こえ~
おいしく召し上がり…ってこともなさそうだし

fateさんへ

継続して読んでくださって、本当にありがとうございます!

そうです。彼は危ないんですよ。フフフフ……。
って、fateさんは危なくないですよっww

緋色のこと可愛いと言ってくださり、感謝です!
ゆない。も、緋色は他のヒロインと違ったタイプですので、個人的に気に入っています!w

ダメ子さんへ

『カギビト』を読んでくださり、ありがとうございます!
この作品は読者が少ない(泣)なので、読んでくださるダメ子さんが、女神に見えます!w
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