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『カギビト』15(ライトノベル)


 時刻は六時四十五分。緋色は『Loud Sound』の前にいた。楽美はまだいない。さっき店に入って訊いてみたところ、着替えなどの準備をしているとのことだ。
「はぁ……」
 独りため息をつく。ここにたどり着くまで、想像通り慌ただしく時間が過ぎていった。なにを迷う必要があるのか、どんな服を着ていくかで結構な時間を浪費してしまったのが原因の一つだ。
 結局着たのはなんの変哲もない白のワンピースと黒いジャケットだった。緋色のイメージだとロックはそんな色がするのだ。これだけだとちょっと地味なので、一応アクセントとして髪をツインテールにし、左右に黒と白のリボンをつけている。
「お待たせー」
 楽美が相変わらずの明るい調子でやってきた。上は可愛いロゴの入ったTシャツに淡いピンクのパーカー、下はジーンズという比較的軽い格好だ。
「ふぉっ?」
 奇声を上げたまま、楽美は停止した。じっと緋色を見ている。
「か……」
「か?」
 緋色の脳裏に嫌な予感が生まれた。
 前にもこんなことがあったような……。
「可愛いぃー!」
「あぅ?」
 楽美は緋色に二度目のタックルを敢行。その豊満な胸で緋色を窒息死の危機に追いやる。
「ら、楽美さん……」
 緋色は楽美をバシバシと叩いた。
「あ、また? ごめんっ!」
 緋色に六回叩かれたあたりで、ようやく楽美は彼女を解放した。
「はぁ……はぁ……」
 緋色は新鮮かどうかなんて構わず、とりあえず空気をおもいっきり吸う。酸素が体を巡ることで徐々に意識がはっきりしてきた。
「またやっちゃった……。ごめんね、緋色ちゃん」
 泣きそうな顔の楽美は両手を合わせて謝罪した。
 そんな彼女の可愛らしい態度に、緋色は笑顔で応える。
「大丈夫ですよ。それより、この服似合ってますか?」
 緋色はスカートの裾を少し広げてみせた。
 元気を取り戻した楽美は二、三度頷く。
「うん、めちゃくちゃ可愛いよ! これはわたしじゃなくても抱きつきたくなるって!」
「あはは……。ならよかったです」
 安心した表情の緋色。楽美はフフフと笑った。
「やっぱり好きな男の子の前では可愛いカッコしたいもんね~」
「! ち、違います!」
「うんうん。わかるわかる」
 全く変化なしの勘違いぶりに、緋色は苦笑するしかなかった。
 別に氷鉤くんに見られるからってこんな格好したわけじゃないもん。ただライブに行く時の服装がわからなかっただけだもん。
「もう、からかわないで下さいよ。わたし先に行きます」
 緋色は意気込んで歩き出した。しかし、五歩進んだところで振り返る。
「あのー……」
 申し訳なさそうに緋色は楽美を窺う。対する楽美はにやにやと笑っているだけだ。二人の間に一瞬沈黙が降りる。
 と、ようやく楽美が口を開いた。
「場所、わかんないんでしょ?」
「……はい」
 気まずそうに緋色は頷く。
 楽美はそんな緋色に近づき、赤い髪を優しく撫でた。
「行こっか?」
「はい、そうですね」
 二人は笑い合い、そしてライブ会場へと向かった。
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